日々の数字に追われて本来のマインドセットを見失い、いつの間にか「提供者の目線」になってはいませんか?ビジネスの成功には、常に「顧客視点」で捉えるマインドセットが欠かせません。顧客視点で重要なのは、顧客が何に興味を持ち、不満を覚え、どういった悩みを抱えているのかを常にフラットな視点で観察する姿勢です。僕は、長年にわたりマーケティングに携わってきた経験から、顧客視点のあり方について深く熟知しています。この経験を元に、顧客視点を踏まえたマインドセットのあり方について詳しく解説します。
顧客視点において大切なことは、いかに顧客の潜在ニーズをすくい上げていくかが成功の鍵となります。しかしながら、日々数字に追われているビジネスパーソンにとって「顧客視点」と「提供者目線」の間で揺れ動いてしまい、いつのまにか顧客視点が掛け声だけに終わってしまうケースが多く見受けられます。そうした上辺だけの顧客視点ではなく、本質的な顧客ニーズを敏感にキャッチするにはどうすれば良いのか、またポジティブとネガティブの間で揺れ動くマインドをどうコントロールしていくかについて、じっくり深掘りしていきます。
顧客視点に立つことの重要性
たとえばパソコンで作成したメールを送る際、受け取る側がスマホで読むケースを想定して書いている人はどのくらいいるでしょうか、おそらく少数派ではないかと思われます。また、お店で店員さんにまとわりつかれ「うっとうしい」と思ったことはありませんか?この店員さんも顧客視点が欠けていて、お客さんの「売られたくない」「自分で決めたい」という心理に寄り添っているとはいえません。
目まぐるしく変転し先行きの見通せない今の時代においては、従来の市場やユーザーのニーズを調査して仮説を検証していくアプローチでは通用しなくなっています。モノを所有することで満足が得られた大量消費の時代が過ぎ去り「モノからコト志向」へ既に移行していることは周知の事実です。誰でも情報にアクセスできる便利な時代においては、社会環境の変化に柔軟に対応していかなくてはなりません。ただ、いくら社会環境が変化していたとしても、常に人間が中心であることには変わりありません。
変化の早く正解がわからない多様化・複雑性の時代においては、常に新しい価値の創出が求められます。そのためにも革新的な技術や発想により新たな価値を生み出すこと、つまりイノベーションが重要課題となってきます。人々の志向は、機能的なものからサービスといった感情面へと移行し、さらにはスターバックスのような雰囲気を楽しむ体験型のサービスが活況を呈しています。
こうした変遷も、顧客視点に立脚したイノベーションによって成り立ってきたものであり、今後はTikTokやライザップのような自分自身を変えて何かを生み出したいといった欲求が、消費者による動機づけの主役となりつつあります。それだけに、顧客視点に立った観察力や思考力が今後ますます重要になってきています。
お客様の声と本当に欲しいものは違うということ
一つの例として、顧客アンケートを綿密に調査しサービスに反映させたものの、見事に失敗したといったケースをよく耳にします。顧客アンケートは、製品やサービスに対する評価を言語化したものにすぎず、即興的な意見や思いつきで書かれているケースが多数です。よって、あまり鵜呑みにしてしまうと「漠然としたお客さんの不快感や不満」といった潜在ニーズを拾いきれていない可能性があります。問題点の洗い出しを十分に行わず、問題の解決を急いだケースといえるのではないでしょうか。
自動車王ヘンリー・フォードの名言「もし私が何が欲しいかと聞いていたとしたら、人々は『もっと速い馬』と答えただろう」をご存じでしょうか?この名言は、スティーブ・ジョブズお気に入りのフレーズとしても有名です。人々がいかに自分の本質的な欲求に気づかず言葉に表現できないのかが、この名言からくみ取ることができます。「お客様の声」を鵜呑みにしすぎて、本来の「潜在ニーズ」からかけ離れてしまうなどというのは、典型的な例といえます。つまり「お客様の声」を鵜呑みにするだけでは、自動車を作ろうという発想は生まれないのです。
顧客視点に立つためのマインドセットとは
イノベーションとは、人の潜在ニーズを見つけ出し、それを今あるものと組み合わせて解決策を提示し新しい価値を提案するものであって、なにも無から作り出すというものではありません。人々の潜在ニーズを探るには、問題解決を模索する前に問題の本質を見抜くことが必要となってきます。「なぜその人は、その行動をとったのであろうか?」「普段はどのように行動しているのだろうか?」「どのような考え方をしているのだろうか?」と深掘りをしていくことによって、表面的ではない潜在的ニーズが浮き彫りとなってきます。
日々の営業数字に追われていると「提供者の目線」に傾いて視野が狭くなり、顧客の求めることにまで頭がまわらなくなってしまうことが往々にしてあります。そうすると無意識にネガティブなマインドが態度に現れてしまい、顧客に「売り込みをされているのではないか」と警戒されてしまうおそれがあります。そうした自己のネガティブなマインドを常に警戒しつつ、顧客から「自分のために提案をしてくれている」と思ってもらうにはどうしたらいいか、常にそう考え続けていくマインドセットに切り替えておきましょう。
顧客視点を持続するためのマインドセット
顧客の潜在ニーズを拾っていくには、トライアル・アンド・エラーがどうしても必要です。ともすると提供者視点に傾きがちなマインドを律し、顧客視点を保っていくには「成長マインドセット」が欠かせません。成長マインドセットとは「人間の能力は努力によって向上できる」との信念のもとに、困難に直面したとしても、それを成長の機会と捉え、乗り越えるために努力する前向きな姿勢です。
それと対を成しているのが「硬直マインドセット」であり、人間の能力や才能は生まれつき決まっているという偏見や思い込みです。そのまま放置してしまうと硬直マインドセットに傾いてしまう可能性もある自分を認め、成長マインドセットに戻すチャレンジを絶えず続けていきましょう。また、ネガティブなマインドに見舞われた際に、どういう状況下で硬直マインドセットになってしまうのかを検証してみるのも1つの有効な手段です。
そしてもう1つ、環境や人間関係を見直してみることも大切です。ポジティブシンキングに触れることのできる研修会や講習会に参加するのも有効であり、ネガティブな人たちとの関係性を見直してみることも成長マインドセットには必要な要素といえます。アメリカの起業家ジム・ローンは、いみじくもこう述べています。「あなたは、最も一緒に過ごす時間の長い5人の友達の平均になる」まさに心にとどめておきたい名言です。
マインドセットの試行錯誤を繰り返しながら、本質的な相手のニーズを把握していくようにしましょう。そして究極的には「自分という商品」を顧客に購入してもらうのが最終目的となります。顧客から「なくてはならない存在」であると認められるまで、自分を磨いていきましょう。
まとめ:顧客の視点に立ち、潜在ニーズをすくい上げていくことが重要
ここまで顧客の潜在ニーズをくみ取るための「顧客視点」の重要性や、それに深く関わるマインドセットついて解説してきました。最後に要点を4つにまとめました。
- 目まぐるしく変転し先行きの見通せない今の時代においては、顧客視点に立脚したマインドセットがますます重要性を帯びてくる
- 顧客視点に立つには、顧客の考えや行動を深掘りして観察する姿勢が重要である
- 顧客視点に立つためのマインドセットを律するには、提供者視点で独りよがりな方向に向いていないかどうか自問自答してみることも重要
- 究極的には「自分という商品」を顧客に購入してもらうのが最終目的である