ビジネスを始めた際、新規顧客の獲得が重要なことは容易にわかると思います。見込み客へのファーストコンタクトのことを、セールスアプローチ、営業アプローチと言います。僕はセールス代行として、セミナーや説明会で初対面の見込み客に対し、70%以上の確率で最終的な契約に結びつけてきました。この経験から、好印象を与え顧客の心をつかむアプローチのコツについて詳しく解説します。
セミナーや説明会に申し込む人は、すでに商品やサービスへの関心が高いため、話を聞いてもらう準備ができています。ですが、飛び込み営業やテレアポ、交流会などで知り合う初対面の人は、どんなに良い商品・サービスであっても、興味がない話を聞く耳は持っていません。もしあなたが自分の商品やサービスがいかに優れているかを説明していたら、今すぐやめてください。人は売り込まれるのは嫌いです。何か売りつけられると感じたら、反射的に防御の体制に入ってしまいます。
お客様は何を知りたいのか?
お客様は商品に興味はありません。興味があるのは、自分にとってどういうメリットがあるのかということです。何ができるのか、どのようないいことがあるのか、自分の問題や悩みが解決できる物なのか、自分にとって必要なのか。商品・サービスを使ったその先の未来にしか興味はありません。
売り込まないセールスができる人は、自分が話すよりもお客様の話に耳を傾けます。質問と確認を繰り返し、お客様が必要としている情報を聞き分けています。ここで一つ有効なテクニックがあります。「お客様の話した言葉をそのまま使うこと」です。人は自分の言葉を使われることでしっかり話を聞いてくれているという気持ちになり、売り込まれるという抵抗感を感じず本心を話しやすくなります。お客様のニーズをより引き出せることにつながります。
お客様が持つニーズの中には、本人もまだ自覚していない『潜在ニーズ』である場合があります。お客様本人に「確かに、それが悩みだ」と自分のニーズに気づかせることができれば、新たな興味や関心を引き起こすことも可能です。少し高度なテクニックが必要ですが、こちらが誘導して引き出したのではなく、お客様が自分自身で気づいたと思わせることがポイントです。自分の意志で選んだという認識が、次のアクションにつながります。これができれば、売り込みなど不要です。
お客様から好かれるアプローチ方法
今のご時世、良い商品であることは当たり前。機能や性能で差をつけることは難しいです。だから「何を買うか」より「誰から買うか」という時代と言われるようになりました。スペックに差がないのであれば、販売者や生産者の想いや人となりに共感し、「この人と繋がっておきたい」「この人が薦めるなら間違いないだろう」と購入に至るケースも少なくありません。
では、人はどんな人から買いたいと思うのでしょうか?それは、知らない人より知っている人。知っているだけの人より、好きな人。好きなだけの人より、専門的であったり権威性のある人から買いたいと思いませんか?次に、お客様から好意的に思われるアプローチについて解説します。
例えば、初対面の人と出身地、出身校が同じというだけで、一気に距離が縮まったというような経験はありませんか?人は共通点があるだけで、親近感がわいて好意的になることがあります。また、あなたの過去を物語で伝えることも効果的です。特に苦難を乗り越えてきた話に、人は感情移入し、興味を持ちます。スタンフォード大学のジェニファー・アーカー教授によれば、人間は論理的な事実に比べて、物語の方が22倍も記憶に残りやすいとの研究結果が出ているそうです。僕にも逆境からのV字回復ストーリーがあります。機会があればいつかお話しします。
お客様の意識レベルに合わせたアプローチとは
コピーライターで有名なジーン・シュワルツ氏が開発した意識レベルの5段階というものがあります。意識レベルとは、お客様があなたやあなたの商品のことをどれだけ知っているか、それにより、抱えているニーズ・問題解決欲求の高低を5つの段階に分けています。
- Most Aware(モースト・アウェア)は、あなたのことも商品もよく理解している最も認知度が高い状態です。
- 次にProduct Aware(プロダクト・アウェア)あなたのことは知らないけど商品のことは知っている、つまり誰から買うかは決めていない状態です。
- 次のSolution Aware(ソリューション・アウェア)は商品ではなく、解決する方法があることは知っている、つまり解決策を選んでいて商品には気づいていない状態です。
- 次のProblem Aware(プロブレム・アウェア)は自分が抱えている問題には気づいているが解決策には気づいていない状態です。
- そして最後のUnaware(アン・アウェア)は何も知らない、問題にすら気づいていない、最も認知度が低い状態です。
この意識レベルの認識を間違うと、購入に繋がらないということが起こります。例えば、問題にすら気づいていないUnaware(アン・アウェア)の人に、いきなり商品の説明や価格の話をすると、売り込まれていると感じさせ、警戒されてしまいます。こういう人にはストーリーを語ったり、間接的な情報から始めて、まずは興味を持ってもらうことが重要です。そして徐々に意識レベルを高めていけると、購入に繋がっていきます。
逆に、買う気満々のMost Aware(モースト・アウェア)の人にストーリーを語るような遠回りなことをしていては、買う気を無くさせてしまう可能性もあります。すでに関係性ができているお客様には、「こんな新商品が出ました」と直接的に案内するだけで、買ってくれる確率は高いです。顧客の意識レベルをきちんと理解した上で、どのようなアプローチをするか使い分ける必要があります。
まとめ:ファーストコンタクトから売り込みしないセールスは始まっている
ここまで、売り込みせず成約につながるアプローチ方法について解説してきました。最後に要点を4つにまとめました。
- 売り込まないセールスができる人は、自分が話すよりもお客様の話に耳を傾けている。
- お客様自身もまだ気づいていない『潜在ニーズ』を引き出せると、新たな提案も可能になる。
- 「誰から買うか」という時代に、共通点探しとストーリーテリングでお客様の好意を得る。
- お客様の意識レベルに合わせて、アプローチを使い分ける。