人の欲求を表す言葉として、「短期的欲求」があります。短期的欲求という言葉の意味はわからなくても、次のような商品やサービスに興味を持ったことが一度はあるのではないでしょうか。
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実はこの文章こそ、あなたの短期的欲求を刺激するように構成されたセールスコピーです。冷静に、論理的に考えれば、あり得ない話と理解できても、本能ではこの甘い言葉に惹かれてしまいます。ここでは、人の習性とも言えるこの現象が、なぜ起こるのか、そしてどのようにビジネスに活かすべきなのかを解説します。
短期的欲求は、脳の構造とも結びつく考え方です。この欲求をうまく刺激することは、お客様の脳をハックすることにも繋がります。人の欲求は、セールス活動だけでなく、商品やサービスの設計にも関わるビジネスの重要事項です。これから説明する内容をしっかりと学び、あなたのビジネスに取り入れることで、簡単かつ客単価を上げたビジネスに繋げることができます。脳の構造など、聞き慣れない言葉もできる限り分かりやすく、かつ具体的に説明するので、ぜひ最後までご確認ください。
短期的欲求と長期的欲求とは
短期的欲求とは、人間にとって苦労せず、短時間で、簡単に欲を満たしたいという欲求を指します。短期的欲求には、食べる、寝る、遊ぶなどの本能的なものから、早い・楽・確実・簡単・安くなど、苦労せず求める報酬を得たいと考えることまで含まれます。この後説明する長期的欲求よりも優位に働くことが多く、ビジネスをする上で絶対に知っておくべき人間の習性です。
逆に長期的欲求とは、本能ではなく、理性的に考えて行動した先にあるものを求める感覚です。例えば、高校3年間しっかりと勉強して〇〇大学に合格する、毎日5時間副業の時間を確保し、成功するまでやり続ける、などです。欲求という言葉はついているものの、長い時間苦しい時間に耐えることを前提とした考え方です。
短期的欲求が存在する背景
短期的欲求は本能に近いものという説明をしましたが、これは脳の構造にも関係します。人間の脳を3つの構造に分けた考え方では、次のように説明されています。爬虫類脳=短期的欲求、哺乳類脳=感情、人間脳=理性というように、それぞれの脳ごとに特性があります。まず爬虫類脳は、本能的かつ短絡的に自分に必要な行動を優先します。次に哺乳類脳は感情や仲間意識を優先します。そして最後に人間脳は、論理的に考え、正しい答えを優先します。脳の働きには優位性があり、爬虫類脳>哺乳類脳>人間脳の順で優位に働くのです。
例えば、ビジネスに関する商品を購入する場合、それぞれの脳は次のように働くでしょう。爬虫類脳では、その商品が今の自分をすぐに助けるか否かで判断します。長期的に役に立つかではなく、すぐに、というのがポイントです。次に哺乳類脳では、他の人が使っているか、知り合いが売っているか、を気にします。そして最後に人間脳では、自分の目標から逆算し、必要か否かを判断します。このように、同じ商品を見ても、刺激する脳によって刺さるセールスポイントは異なります。
短期的欲求はマーケティングの肝になる
短期的欲求は、人間の本能と深くつながっています。セールスの難易度を考えた時、一番優位に働く爬虫類脳、すなわち短期的欲求を刺激することは最も合理的な選択です。ビジネスとして捉えればこれほど分かりやすい押しボタンはありません。さらに、短期的欲求を刺激することは、セールスの難易度以外にも、次の二つの利点があります。
まず一つは、購入までの決断が早いことです。短期的欲求では、長期的なプランを元にした購買決定は行われません。あくまでその時、すぐにお客様の状況を変えることができるか否かで判断されます。思考時間は短く、直感的に購入され易い傾向があります。二つ目は、多少高くても迷いなく買うことです。一つ目の理由と被る部分がありますが、短期的欲求を満たすことを優先するため、コストパフォーマンスなどは度外視されます。比較検討をすることも少ないため、多少高くても購入されるでしょう。
短期的欲求をマーケティングに活かすための2ステップ
一つ目のステップは、「今」解決しなければならないと思わせることです。例えば、副業の商材を販売すると仮定します。A社は、副業があれば、今の生活が豊かになる、と伝え、B社は、副業を今すぐ始めないと、市場が飽和し、稼ぐチャンスがゼロになる、と伝えるとします。この場合、より本能を刺激するのは後者です。危機感を抱かせることが、お客様の本能を刺激するためには必要です。
二つ目のステップは、「簡単に」解決できると思わせることです。例えば、副業の商材の例では、A社は毎日3時間毎日作業をすれば、月5万円稼げる、と伝え、B社はこのテンプレートに沿って投稿するだけで、月5万円稼げる、と伝えるとします。こちらも後者の方が短期的欲求を呼び起こしやすいことは明白です。難しい内容では意味がなく、一見して簡単だと、シンプルに理解できることが大切です。
同じ商品を販売する場合も、言語化するコンセプト一つで結果は大きく変わります。これは販売する段階だけなく、マーケティングの最上流にあたる商品コンセプトを決める際にも重要な考え方です。ターゲットにする人を、「今」困っている人、「すぐに」解決する必要がある人、に絞るだけで、商品の販売難易度は大きく下がります。
短期的欲求をマーケティングに利用する際の注意点
短期的欲求を刺激するために、嘘の情報を利用することは問題ですが、同じくらい、過度な煽りをすることも禁物です。特に情報商材などでは、詐欺商材と扱われ、決済会社からアカウント凍結される例などもあり、非常にリスクが高いです。例えば、1日5分スマホだけで月収100万円、などよく見るかと思いますが、詐欺商材に判定されることもあるため、事実だとしても適度にぼかす必要があります。
次に、短期的欲求を利用したセールスを行う場合、本当にその欲求を満たせる商品やサービスにすることが大切です。例えば、1ヶ月で結果が出る、という内容であれば、毎日のスケジュールを細かく渡す、行動の詳細まで指示する、などです。短期的欲求を満たすためには、商品の量、質ともに高める必要があります。覚悟を持って取り組みましょう。
最後に販売者側としても、目先の売上目標という短期的欲求ばかりを求め過ぎるのは避けるべきです。短期的欲求を刺激する商品は、お客様がその商品を利用する期間も短くなります。要するに短期的には売上が伸びても、いつかは鈍化するのです。だからこそ、長期的欲求を刺激するような商品に繋げることが大切です。長く使うことが前提であれば、サブスクリプション型のサービスのように、安定した売上を出せるビジネスに繋げることができます。
まとめ
ここまで、短期的欲求が起こる背景から、ビジネスに活かす方法まで説明してきました。最後に要点を4つにまとめました。
- 人間には短期的欲求と長期的欲求があり、脳の構造が背景になっている
- 人間の脳は3つの構造に分けることができ、爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳の3種類がある
- 短期的欲求を刺激することで、お客様の決断が早く、客単価も高くなる傾向がある
- 短期的欲求を利用したセールス活動は、短期的には非常に強力だが、安定したビジネスには長期的欲求への訴求も必要不可欠