心理学には、「社会的証明の原理」と呼ばれるものがあります。社会的証明というと難しく聞こえますが、言葉自体は知らなくても、
- 周りの人の動きを参考にして意思決定する
- 多くの人が良いと言っているものは、良いものだと考える
という経験をしたことがある人は多いと思います。ただなぜこのような現象が起こるのか、論理的に説明できる人は多くないでしょう。強力な原理なので、理解していないと非常にもったいないです。よってここからは、社会的証明の原理の基本から、ビジネスへの活かし方を解説します。
社会的証明の原理は、気づいていないだけで、様々なビジネスに取り入れられています。この原理を知らない人は、「人気商品は良いものだから人が集まる」と考えます。一方で、社会的証明の原理を理解している人は、「人が集まったから良い商品だと思われた」という可能性に気づくことができます。この原理をしっかりと学び、あなたのビジネスに取り入れることで、今ある商品の売上を、一気にあげられる可能性が見つかるはずです。売上を向上するための一つの方法として、しっかりと学び、ビジネスに取り入れてください。
心理学における社会的証明の原理とは
社会的証明の原理とは、何かを判断する時、自分の考えや感覚ではなく、他者の判断に基づいて決断する人間の心理を指します。ベストセラーとなった書籍、「影響力の武器」でも記載がされているほど有名、かつ生活の中に取り入れやすい心理学の考え方です。
社会的証明の原理は、常に起こるわけではなく、ある特定の状況を満たした時にのみ起こる現象です。社会的証明の原理が人間の真理に基づく考え方である以上、この原理に基づいて行動をした方が楽だと、判断する場面が必ず存在します。ここから説明する2つの条件を満たす場合に、人は他者の判断に従うことを選択する傾向にあります。
社会的証明の原理が起こる2つの条件
条件の一つ目は、自分自身がその場面に詳しくなく、どのように行動することが正解かわからない場合です。例えば、自分が初めて使う商品を購入する時、他者の行動を参考にすることが多くなります。商品情報を十分に集めたとしても、購入の判断は自分だけではできず、他者がどのように判断したのか、結果はどうだったのか、という情報を必要とします。
条件の二つ目は、参考にする人が自分と似たような属性、かつ同じようなシチュエーションにいる場合です。例えば、あなたは、20歳で筋トレ初心者の男性だとします。初めてプロテインを購入する時、60歳の女性が購入したという情報は参考にならないはずです。あなたと同じような属性の人の行動でないと、購入を決断するための要素にはなりません。
社会的証明の原理を証明する実験結果と今後の動向
社会的証明の原理を裏付ける実験として、心理学者のアルバート・バンデューラによる実験が有名です。この実験では、まず犬を怖がる保育園児に対して、1日20分間だけ、小さな男の子が犬と楽しそうに遊んでいる映像を見せます。その後、保育園児がいる部屋に犬を入れたところ、67%の園児が犬に近づき遊び始めました。このように、小さい子どもだったとしても、他者の行動に影響を受け、自分の行動が変わるのです。
近年、インターネット、特にSNSの普及によって、社会的証明の原理はどんどん強力になっています。これまでは、自分の周りの人だけを参考にしていましたが、SNSの普及により、世界中の人の行動を知ることができるようになりました。そのため、自分の考えではなく他者の行動で意思決定をする機会が増えています。
セールス活動の効果を数倍にする社会的証明の原理とは
社会的証明の原理は、セールス活動において非常に強力な武器となります。セールスの最終目標は商品やサービスを購入してもらうことです。社会的証明の原理を利用すれば、迷っているお客様に対して、購入することが正しい行動だ、と思わせることができます。
社会的証明の原理は、お客様が他者の行動を知ることができれば、基本的にはどのようなものでも利用可能です。注意すべき点として、社会的証明の原理を利用するためには、他者の行動を示す際、満たしておくべき要素が2つあります。ここではその要素について解説します。
社会的証明の原理を利用する上で意識するべき2つの要素
意識すべき要素の一つ目は、十分な質と量があるか、という点です。他者の行動を参考にする際、同じ行動をしている人が多ければ多いほど、その行動を取ることに迷いがなくなります。ただし、その情報が信頼のおけるものではないと、不信感から迷いが生まれるため注意が必要です。例えば、1人の口コミよりも、1000人の口コミの方が信頼できる、星評価だけの口コミは信用できないが、しっかりと記載されたものであれば信頼できる、などがあります。
意識すべき要素の二つ目は、情報元のイメージができるか、という点です。社会的証明の原理が起こる条件として、自分と同じ属性の人が同じシチュエーションで行動している必要があります。そのため、口コミをしている人が、ある程度お客様と同じ属性であることを伝えることが大切です。例えば、写真付き、プロフィール付きの口コミの方が行動に移しやすい、などがあります。
セールス活動に社会的証明の原理を取り入れる方法
社会的証明の原理はセールス活動に広く応用することが可能です。Webマーケティングで活かすことはもちろん、対面営業でも非常に有効に働きます。ここでは、Webマーケティングに活かす場合と、営業に活かす場合の2つをご紹介します。
まず、Webマーケティングに活かす場合、口コミやSNSでの「いいね」数などを利用し、社会的証明を行うことが効果的です。不特定多数の人が目にするマーケティングでは、より多くの人に、「これは自分と同じ属性の人だ」と感じてもらう必要があります。そのため、できる限り量を集めて発信することが重要になります。
特にSNSを使ったマーケティングでは、コメントやいいねをした人のパーソナリティを知ることが容易です。性別や年齢、家族構成から、普段の発言や思考まで知ることができるため、お客様は自分の属性との類似性を発見しやすい環境です。社会的証明の原理を利用するために、SNSは避けては通れないツールとなるでしょう。
次に、対面営業に活かす場合、多くの情報を出すのは難しいため、クロージングのトークに、社会的証明の原理を引き出すような内容をいれることで、お客様の興味を引きます。例えば、「大変ありがたいことに、この商品は業界で一番人気となっており、在庫が少なくなっています。」などです。多くの人に求められている商品だ、ということがわかるように説明することで、社会的証明の原理を利用し、購入へのあと押しができます。
社会的証明の原理を使う上での注意点
社会的証明の原理は非常に強力ですが、お客様との信頼関係によって成り立つ原理でもあります。正しく利用することができれば、多くの人の購買行動に影響を与える一方で、使い方を間違えれば全く逆の結果になることもあります。加えて、この原理が全く当てはまらない人も中にはいるため、その内容についてここでは説明します。
注意点の一つ目は、嘘の情報を使った印象操作はお客様からの信頼を失う、という点です。サクラを使う、悪いレビューだけ削除してよく見せるなどはお客様からの信頼を一気に失います。特にWebマーケティングでは、直接人から情報を聞くわけではないため、信頼性の担保が重要かつ困難なポイントです。一度でもあなたが掲載するレビューに不信感を持たれてしまうと、社会的証明の原理を利用するのは難しくなるでしょう。
注意点の二つ目は、社会的証明の原理に当てはまらない属性の人が存在する、という点です。世の中には誰も持っていないことに価値を見出す属性の人がいます。あなたのターゲットがこの属性の人であれば、社会的証明の原理はマイナスに働くため注意が必要です。例えば、パリコレモデルはこの属性に当てはまります。流行りの服を着るのではなく、流行りを作る側の人間のため、誰かと同じでは意味がありません。社会的証明の原理に限らず、何事も使い所は重要なので注意して取り入れましょう。
まとめ
ここまで、社会的証明の原理の基礎から、ビジネスに活かす方法まで説明してきました。最後に要点を4つにまとめました。
- 社会的証明の原理とは、自分の考えや感覚ではなく、他者の判断に基づいて決断する人間の心理を指す
- 社会的証明の原理を引き起こす条件は、自分がその状況に精通しておらず、かつ自分と同じ属性の人が同じ状況で決断していること
- 社会的証明の原理をはWebマーケティングや対面営業など、セールス活動で大きな効果を発揮する
- 社会的証明の原理を利用する場合、使い方と使うべき対象に注意することが大切