ビジネスにおいて、仕事の成果に一番影響を与えるものは何だと思いますか?技術でしょうか、スキルでしょうか、それともノウハウでしょうか?世界最高峰のコーチ、アンソニー・ロビンズは、こう述べています。「成功の8割はマインドセットにある」と。僕は自己啓発や心理学、NLPに深く精通し、長年にわたりコーチングをしてきた経験からマインドセットのありかたについて熟知しています。この経験を元に、マインドセットを意識した目標設定のメリットや重要性、設定方法から注意点などについて詳しく解説します。
マインドセットとは、考え方や物事への捉え方の傾向性を指します。ある状況下において、それをポジティブに捉えるのか、あるいはネガティブに考えてしまうのか、その人のマインドセットによって反応が異なってきます。ビジネスにおいては、ポジティブなマインドセットであることが成功の鍵を握ります。マインドセットは生まれ育った環境や過去の経験によるものとされ、濃淡こそあれ大半の人はポジティブとネガティブ両方のマインドセットを持ち合わせています。ネガティブな方向へ傾き方向性を見失わないためにも、マインドセットを意識した具体的な目標設定が重要です。
目標設定の重要性について
目標設定はなぜ必要なのでしょうか。もし目標設定をしなかったとしたら、どうなるでしょう。きっと、道しるべがいつまでたっても見つからず、そのうち自らの現在地すらも見失い呆然自失になってしまうことでしょう。そうなると、せっかくのモチベーションも喪失しかねません。そのためにも目標は必ず設定しておく必要があります。
目標設定は、最終目的とするゴールに向けて何をすべきかを模索し、具体的に言語化していく作業です。例えば「売上を上げる」という最終目的に向けて「売上を前年比110%を達成する!」といった具体的数値に落とし込んでいきます。その数値をクリアするためには「既存得意先の深掘りと同時に新規開拓を進めていく」といった具体的施策にまで落とし込んでいくのが目標設定の到達点です。
目標を設定することにより、ゴールへの道筋が明確になり、必要なコストやリソースの見積もりが容易になります。このような計画であれば、時間や労力を最小限に抑え、最短ルートでの目標到達が可能です。ゴールに向かう道のりにマイルストーンを設け、そこで進捗状況を確認し、必要に応じて修正を加えることで、迷うことなく進むことができます。
目標設定における3つのメリット
まず1つ目は、目標設定を達成するためのステップを可視化できるという点です。現時点での目標達成率は何%であり、未達であった場合には何が問題であったのか、今後どういった対策をすべきかが見えてきます。また、遠くのゴールにいたるまでの道のりで、自分が今どこに位置しこれから何をすべきかが明確になります。
2つ目は、進捗の「見える化」によって目標達成サイクルの効率化をはかれることにあります。「見える化」により、目標達成までのPlan(計画)Do(実行)See(検証)といったサイクルを効率よく回していくことができ、無駄なアクションを省けます。
3つ目は、目標達成意識の高まりによるモチベーションの向上です。自ら立てた目標設定であるなら、前向きな思考でより道筋を立てながら行動できます。これまでよりも少し高めの目標を設定することによって、それをクリアしていく達成感が日々の成長へとつながります。また、そこから得られた経験やノウハウがさらなる自信へとつながり、新たな挑戦への糧にもなるでしょう。
「SMARTの法則」による目標設定
SMARTの法則とは、5つの基準を用いて目標を設定する手法です。ジョージ・T・ドラン博士によって1981年に提唱されたもので、世界中のビジネスパーソンに活用されています。
ここではSMARTの頭文字から順に解説します。
- Specific【スペシフィック】(具体的か)
ただ「売上を増やしたい」というだけではなく「1年間に1億円の売上を達成する」といった明確な目標になっていることが必要です。 - Measurable【メジャラブル】(測定可能か)
目標が数値化できるかどうかがカギです。数値化することによって「前年比○○%」といった目標設定が可能となり、そのことにより進捗度合いも計測できるようになります。 - Achievable【アチーバブル】(実現可能かどうか)
現実的に見て達成が難しい目標は、モチベーションを下げてしまう要因となります。努力すれば達成できる目標値に設定することが重要です。 - Relevant【レラバント】(目標が個人の利益に関連しているかどうか)
企業としての利益と、個人として目指している方向性とが関連しているかどうかも重要なポイントです。将来的にスキルアップしていきたい個人と企業の方向性がマッチしていれば、モチベーションも高まります。 - Time-bound【タイムバウンド】(期限の設定をしているか)
期限を定めないと、ダラダラと先延ばしにしてしまいがちです。期限を設定することによって作業への集中力が高まり、そのことによって効率化がはかれます。
目標設定のコツ・注意点・具体例
「自分の能力は努力や経験によって伸ばすことができる」といったマインドセットを常に保ち続けられるかどうか、それが目標設定時においては重要となります。目標の根拠を明確にしたうえで、現状より少し高めの「努力をすれば達成できるレベル」に設定するのがコツです。目標設定の要は、まずゴールを決め期限を定めることであり、ゴールという最終目標を定めたらそこから逆算し、さらに目標を細分化していきます。そして中間目標を設け、時間軸で進捗状況を確認できるようにします。
注意点として、目標設定がモチベーションを維持するものであることも忘れてはいけません。マインドセットの観点から、達成数値だけではなくそのプロセスにも焦点を当て、モチベーションを高めていく努力が必要です。また、状況が変化する可能性を目標設定に組み込んでおき、目標に執着しすぎることなく柔軟に運用していくことが求められます。実行段階においては、中間目標における進捗状況の記録や確認を欠かさず行い、目標を達成できた要因や至らなかった原因などを詳細に分析し、今後の活動に反映させていくことが重要です。
目標設定の具体例として「売上前年比110%」の目標を掲げた場合に、季節変動等を加味した月別予算表に落とし込み、月ごとに進捗度合いを計測します。もし目標の数字に対し未達であった場合に何がいけなかったのかについての要因を分析し、改善点を次の月の行動に反映させていくのです。四半期ごとに中間点を設け、達成度合いに応じた軌道修正を検討します。そのサイクルを1年単位で回していくのが一般的なケースとして考えられます。
まとめ:マインドセットを意識した目標設定が重要
ここまでビジネスの成否にとって必須である「マインドセットを意識した目標設定」の重要性について解説してきました。最後に要点を6つにまとめました。
- 目標設定はゴールへの道筋を明確にし、迷うことなく最短ルートで到達するための道しるべである。
- 目標設定による視覚化で、Plan(計画)Do(実行)See(検証)といったサイクルを効率よく回していくことができる。
- これまでよりも少し高めの目標を設定することによって、それをクリアしていく達成感が日々の成長となり、さらなるモチベーションの向上へとつながる。
- 「SMARTの法則」による5つの項目に照らし検討を進めていくことによって、実現可能で具体的な目標設定が可能となる。
- 「自分の能力は努力や経験によって伸ばすことができる」といったマインドセットを常に保ち続けられるかどうかが目標設定時においては重要である。
- マインドセットの観点から、達成数値だけではなくそのプロセスにも焦点を当て、モチベーションを高めていく努力が必要である。